「リブセンス(村上太一 )」を読んで 、ひと筆 (上)

―25歳、史上最年少で東証一部上場ー

     柳田節(平成25年)




写真は、山梨県 忍野八海  2021/3
木が沈んでいる?
キレイな水面に立木が映っていました
鯉もいる
湧池
土産物屋さんの中を通らないといけない島
水車小屋
遠くに富士山

『リブセンス』(上阪徹)を読んで、ひと筆
―青年起業家『村上太一』(上)―
   平成25年    柳田  節


  *人を幸せにして自分も幸せになる
 平成二十三年十二月、経済界で一つの衝撃的なニュースが報じられた。二十五歳の若さで、求人情報サイトの会社を東証一部に上場させた青年社長のことで、最年少上場記録を更新するものだった。
話題になった村上太一青年は、祖父の影響を受けて早くから起業家を目指していたが、大学時代に仲間と始めた求人サイトが急成長するのを待って上場した。
  起業の動機について経営理念の中で語っているが、驚くべきことに「人を幸せにして自分も幸せになる」というものだった。一般の起業家のように、金儲けしたい、成功したい、名声を得たい、ではなかった。
 この青年が現れたことで、時代は大きく変わろうとしている。いま、物・金の世の中から、徳の時代に変わろうとしていることを裏付ける出来事が、世間で実際に起きているのである。

  *「カンブリア宮殿」に登場
 十二チャンネルの東京テレビで、作家の村上龍氏がコメンテーターを務める『カンブリア宮殿』という番組を見て、私は村上青年の存在を初めて知った。こぼれるような笑顔で村上龍氏と対談しながら、彼の会社の経営理念に話が及んだとき、村上龍氏は「他人の幸福に関与することで自分も幸福感を得る、というニュアンスだと思う。彼のような若き起業家がごく普通に次々と現れることで「日本を覆う閉塞感を打破する」と、若き青年社長に対して大いなる期待を語っていた。
 その後、日経BP社から村上太一青年について一冊の本が出ていることを知り、買って読んでみた。彼が立ち上げた会社『リブセンス』を表題にした本で、フリーランスのライター上阪徹が書いた起業家人物伝風の本だが、「成功より精神的な豊かさ」を求めている青年像が描かれていた。この本からこの村上青年を紹介したい。

  *革新的求人情報サイト「リブセンス」
 実際、どのような事業を行っていたのだろうか。話は遡るが、村上青年は、一部上場する前から既に話題の人となっており、平成二十三年一月にはNHKのニュース番組に生出演している。その時、彼の会社のアルバイトの求人情報サイトの仕組みについて、アナウンサーが思わずこう訊いた。「これで儲かるのですか」
 もちろん、上場するくらいだから、当然利益は出ている。実際、前年の決算では、売上高が十一億、営業利益は五億を超え、利益率も四割を超えていた。
 株式会社リブセンスが運営しているアルバイト情報サイト『ジョブセンス』では、無料で募集広告を掲載でき、また、掲載期限もない。さらに応募者には就業祝金を出している。
 これは、村上青年が自分のアルバイト探しの体験から思いついたことだった。彼が学生時代、アルバイトを探していたときのこと、繁華街を歩いていると、アルバイト募集と書かれた貼紙が貼り出されているのに、同じ情報は、雑誌広告やネットには出ていない。結局、歩き回って見つけた“はなまるうどん”でアルバイトすることになるのだが、情報としてネットに出しておいてくれればいいと思ったという。  
 ところが通常、アルバイトを募集したい企業は、十数万円の高い費用をかけて一週間なりの一定期間のみ、募集広告を出すことになる。アルバイトがそれを見て応募するわけだが、結局、応募者が来なくても掲載料を取られ、期限が来れば掲載は終了してしまう。
 ジョブセンスは違う。無料でアルバイトの募集広告を掲載でき、また、採用が決まるまで期限なく掲載できるのだ。成功報酬型の新しい求人サイトだった。さらに、応募者に、最大二万円までの就業祝金を出している。応募するアルバイトにとっても嬉しいシステムだった。二十三年の祝金の総額は一億円弱。すべて企業から支払われた掲載料の一部なので利益となるはずの売上金で、これをアルバイトたちの交通費など就業に費やした費用の足しにと還元している。
 雇い主の立場に立って、アルバイトの立場に立って、それぞれの人たちの役に立ち、その人たちを幸せにすることによって、自分たちも幸せになる、という理念がここに生きている。
 いまはそういう青年たちが私の近辺を含めて結構、見つかるのである。つまり、彼らは精神的な豊かさを求めている。物の豊かな戦後時代に育って、次は精神的な豊かさを求める土壌にあることを知っている。昔から、富を得た金持ちが次にやりたいことは、ボランティアや、慈善事業の精神的な豊かさの追求であったことを考えると、物・金に不自由せずに育って来たいまの若者が物・金にこだわらず、その次の尊い考えに行き着いても決して不思議なことではない。 (下に続く)

柳田節 随筆作品集 & 散策

― 読んで & 歩いて & 書いて & 撮る ―   随筆春秋 事務局   「昭和の日々」(2008年刊)  (ダイハツミゼット、防空壕、肥溜め、南極調査船「宗谷」、オウム事件の本質…)

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